【企業側視点】退職代行で辞めた社員を通じて考える、職場の空気と見直すべき文化

突然の退職代行連絡──静かに働いていた後輩が消えた日
ある日、僕の所属する部署の後輩が突然辞めた。しかも、使われたのは「退職代行サービス」。
無断欠勤など一切なく、黙々と仕事をこなしていた印象の子だった。上司も動揺していて、「退職代行なんて初めて聞いた」と漏らす声が印象的だった。
ただ、今回注目したいのは「なぜ退職代行を使うに至ったのか?」という背景だ。これは単に個人の問題ではなく、企業文化や職場環境に潜む構造的な課題かもしれない。
退職の“兆し”を見逃す職場が抱える共通点
退職代行という手段は、社員が「辞めます」と直接言えなかったことの証明でもある。
日々の仕事において、
- 「元気がない」
- 「会話が減った」
- 「何か言いたげなのに言わない」
といった“変化”が現れていたかもしれない。にもかかわらず、それに誰も気づけなかった、あるいは気づいても声をかけられなかったとしたら──それは職場の空気自体に問題がある可能性が高い。
声を上げにくい職場とは?
社員が本音を言えず、退職代行という手段を選ぶ背景には、いくつかの企業文化的な要因がある。
- 失敗を許さない空気感:一度のミスで過剰に詰められる
- 上司と部下の関係性が硬直化している:距離感が遠すぎて相談できない
- 陰口文化や上下関係の強さ:言い出すことで周囲に“浮いてしまう”リスク
表面的には和やかに見えても、「何かを言う=立場が悪くなる」と社員が感じているとすれば、それは健全な職場とは言えない。
職場に広がる“憶測”と“モヤモヤ”が二次被害を生む
退職代行が使われた後、職場には説明のない「辞め方」に対して、様々な憶測が飛び交う。
- 「上司と合わなかったのか?」
- 「いじめがあったのでは?」
- 「誰かが原因?」
このような不透明さは、職場に連鎖的な不信感を生む。特に、中堅社員や新入社員にとっては、「いつか自分も…」という不安要素になる。結果として、組織全体の士気が下がるリスクがある。
一般社員の立場でも変えられること
管理職でなくても、現場にいる一人ひとりができることはある。
- 「最近どう?」の一言を意識的に増やす
- 雑談の中で気になる変化に触れてみる
- 「何かあったら話してね」と伝える習慣を持つ
退職代行を使われた経験が、そういった気づきと行動のきっかけになることも。
辞められた事を“他人事”にしない組織へ
退職代行を「若者の逃げ」と片付けてしまうのは簡単だ。しかし、それを選ばせてしまった職場環境こそ、組織として反省すべき点である。
- 離職を未然に防ぐ“職場の気温”を測る習慣
- 相談のハードルを下げる“小さな声の拾い方”
- 一度の出来事を組織全体の学びに変える意識
これらは、企業が今後も持続可能であるために必要な視点だ。
【まとめ】退職代行をきっかけに、職場をアップデートしよう
退職代行は、単なる退職手段のひとつではあるが、それを選ぶ人が存在する限り、企業や職場は常に“自分たちのあり方”を見つめ直す必要がある。
「声を上げづらい空気があるのでは?」 「働く人のSOSを受け取れているか?」
こうした問いを持ち続けることが、離職率の低下だけでなく、働きやすく風通しのいい職場づくりにつながっていく。
退職代行を使われたことはショックかもしれない。でも、その出来事を無駄にせず、次につなげられる組織でありたいですね。
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