板挟みの看護師──医師・薬剤師・患者とのズレに疲れたあなたへ

患者さんのケアに集中したいのに、なぜか気を遣うのは、医師・薬剤師・患者との“ズレ”。
- 医師はスピード重視で早口
- 薬剤師はルールが命だから慎重
- 患者さんは納得できるまで不安が続く
そして、そのすべての間に立って対応するのが、私たち看護師です。
「うまく伝えて当たり前」
「相手が怒らないように話してほしい」
「あなたなら分かるよね?」
こうした“過剰な期待”に応えようとすればするほど、心がすり減っていく──
そんな経験はありませんか?
1. 立場による「ゴールの違い」がズレを生む
看護師は、いろいろな立場の人と接する仕事です。
その中で一番難しいのが、それぞれが目指しているものが違うということ。
- 医師は「いかに治療を早く進めるか」を重視
- 薬剤師は「安全で間違いのない処方」が最優先
- 患者さんは「安心したい」「ちゃんと説明してほしい」が中心
この三者の間で、ひとつの言葉でも意味や期待が異なるため、どうしても看護師が調整役に回らざるを得ません。
しかもその違いは、「誰が正しいか」ではなく、「どの立場から見るか」でズレてしまうもの。
だからこそ、話が噛み合いにくく、気づけば板挟みの中間管理職のようなポジションになってしまうのです。
2. 会話の“言語”が違うという壁
もうひとつのポイントが、使っている言葉の違い。
- 医師や薬剤師は、専門用語や略語が多く、スピード感もある
- 患者さんは、日常の言葉・感情ベースで話すことが多い
たとえば、「NSAIDs(エヌセイズ)」と言っても、患者さんには伝わりませんし、
「この処方は適応外です」と言っても、「何がダメなのか?」という不安だけが残ります。
このギャップを埋めるのが看護師の役割──
そう思ってきたけれど、通訳として常にフル回転しているうちに、どこか疲れてしまう自分がいた、という人も多いのではないでしょうか。
3. 「通訳役」としての期待が重すぎる理由
実際、現場ではこういうことが頻発します。
- 「先生に代わりに聞いてきて」
- 「薬剤師さんに伝えておいて」
- 「患者さんを説得しておいて」
一つひとつは小さな依頼でも、それが毎日積み重なっていくと大きな負担になります。
さらに厄介なのが、ミスが起きたときに責任を問われやすい立場であること。
伝え忘れ、解釈違い、確認漏れ──
誰かの言葉を“運ぶ”仕事には、伝達のミスが即リスクになる緊張感がついてまわります。
看護師の本来の業務ではない部分で消耗していく感覚。
これが“通訳役”に過剰な期待がかけられている状態なのです。
4. 「翻訳者」ではなく「橋渡し役」という視点
ここでひとつ視点を変えてみませんか?
看護師は、すべてを翻訳しなくてもいいのです。
完璧な説明を背負い込む必要はありません。
むしろ、「自分は橋渡しをする人」と割り切ることで、できる範囲を丁寧にやるという姿勢にシフトできます。
- 伝えるときは、できるだけシンプルに
- 無理な依頼には「私では対応できない」と伝える
- わからないことは「確認して戻ります」と正直に返す
“全部対応しなきゃ”と思うより、
“必要なことを丁寧に届ける”意識のほうが、心の余白を残すことができます。
5. まとめ:「気持ちを伝える」ことはできるけど「全員を納得させる」ことはできない
看護師として、誰かと誰かの間に立つことは避けられません。
でも、そこで自分が“調整役すぎる”ことに疲れてきたら、それは頑張りすぎのサインです。
- 立場が違えば、見ているゴールも違う
- 言葉の違いが、すれ違いを生む
- でも、それを全部あなた一人で解決する必要はない
看護師が伝える努力をしても、全員が納得するとは限りません。
でも、その努力は確実に「誰かの安心」に近づいていることを忘れないでください。
もし、今苦しいと感じているなら、
「私は翻訳者じゃない」「できる範囲で十分」と、自分に優しい言葉をかけてあげてくださいね。
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